2026/06/09 09:00

歴史と花をこよなく愛する私にとって、初夏は待ち遠しい季節です。

本来であれば、柔らかい午前中の光を狙って10時頃には到着したかったところですが、朝から溜まっていた洗濯物と格闘していたら、気付けばもう正午。

慌ててカメラを詰め込み、文京区にある小石川後楽園へと足を運びました。

 

駅から庭園へ、初夏の風を感じて

最寄りの都営大江戸線「飯田橋駅」を降り、地上へ出るとすでに初夏の陽気が肌に伝わってきます。

駅から庭園の入り口までは歩いてすぐ。

門をくぐると、売店や飲食店が並び、多くの観光客で賑わう活気ある風景が広がっていました。

門を越えて一歩足を踏み入れると、先ほどまでの喧騒が嘘のように、広大な緑の世界が視界に飛び込んできます。

まず目に留まるのは、琵琶湖を模したという広々とした「大泉水」。

その畔にある「徳大寺石」には、サギの仲間でしょうか、大きな鳥が優雅に羽を休めていました。

その凛とした姿に、遠巻きにカメラマンたちが息を殺してシャッターチャンスをうかがっている様子は、なんとも風情があります。

 

街が抱える、熱気と静寂

ふと遠くの空を見上げると、東京ドームの方角から微かな喧騒が風に乗って流れてきました。

この日、2026531日は、国民的アイドルグループ「嵐」の最後のコンサートが東京ドームで開催される歴史的な一日。

開演は夜であったが、周辺にはグッズを求めるファンたちの長い列が整然と続き、整理のアナウンスが響き渡っています。

時折、彼らの代表曲がかすかに耳に届き、街全体が熱気に包まれているのを感じました。

ここ、小石川後楽園の静寂とは対照的な、多くの人々の熱い想いが交差する光景。すぐ近くで、誰もが何らかの「記憶」を刻もうとしているのだと思うと、不思議な連帯感のようなものが胸をよぎります。

白糸の滝を越え、そんな街のざわめきを背に歩を進めると、いよいよお待ちかねの菖蒲田へと辿り着きました。

 

徳川光圀ゆかりの庭園で、今、菖蒲が見ごろ

小石川後楽園は、江戸時代初期に水戸徳川家初代藩主である徳川頼房により築造され、二代藩主・光圀の修治により完成しました。

日本各地の景勝地を模した庭造りと、儒教的思想を思わせる中国的な趣を取り入れた小石川後楽園は、現存する最古の江戸の大名庭園です。

そんな歴史ある場所で、約660株の菖蒲がちょうど見ごろを迎えています。

園内に一歩足を踏み入れると、色とりどりの菖蒲たちが迎えてくれました。

多くのお客さんが、思い思いの角度でシャッターを切っています。

皆さんの楽しそうな表情を見ていると、こちらまで晴れやかな気分になります。

 

湿度の中に咲く、気品ある花々

この日の東京は、気温もさることながら湿度が高い一日でした。

しかし、この湿り気こそが、水辺を好む菖蒲には最高の舞台なのかもしれません。

群生地の周りを2周ほど、じっくりと時間をかけて回りました。

久しぶりの花の撮影。

実はファインダーを覗きながら「あれ、被写界深度の調整はどうやるんだっけ……?」と一瞬固まってしまう場面もありました。

設定に少し手こずりましたが、花と向き合う時間はやはり心が洗われます。

撮影した一枚一枚に、今の自分が映し出されているような気がしました。

 

花を追いかける喜びを再発見して

撮影は結局1時間ほどで終了。

最後はカメラをバッグにしまい、庭園の歴史に思いを馳せながら、ゆっくりと園内を散策しました。

久しぶりに夢中で花を追ってみて、改めて感じたことがあります。

 「やっぱり、季節の花を追いかける時間は大切だ」と。

忙しない日常の合間に、こうして四季の移ろいに触れることで、また明日から頑張ろうという活力が湧いてきます。

嵐のコンサート会場を目指す人々も、この庭園で菖蒲を見つめる人々も、それぞれが「今日という日」を大切に生きている。

近しい場所で、異なる想いを抱えた人々が息づいているこの景色に、不思議な感慨を覚えました。

次は何を撮りに行こうか。

そんなことを考えながら、湿った風を感じつつ「飯田橋駅」へと向かいました。