2026/02/17 09:00
15時45分。
滑り込みで入場した会場は、すでに山の端に日が隠れ、静かな蒼に包まれていた。 日中の喧騒が一段落し、光がフラットになったこの時間は、実は氷の質感を撮るには絶好のタイミングだ。
相棒のCanon 70-200mm F4L IS USMが、かすかな作動音とともにファインダーの揺れをピタリと止める。
10年経っても色褪せない、結局このレンズに頼ってしまう。
16時30分の昼の部終了まで、私は夢中でシャッターを切り続けていた。
嵐の前の、静かな缶コーヒー
一旦会場を後にし、芦ヶ久保駅前で一息つく。
自販機で買った温かい缶コーヒーが、冷え切った指先にじわりと染みる。
「さて、ライトアップはどこから攻めるか……」
メモ帳を広げ、日中の下見で目星をつけたポイントを振り返る。だが、その余裕はすぐに打ち砕かれることになった。
「……おいおい、マジかよ」
次から次へと駅に滑り込んでくる電車。そこから吐き出される、想像を絶する人の波。皆の目的はただ一つ、夜の闇に浮かび上がる氷の芸術だ。私は自分の甘さを痛感した。
渋滞する「スマホ」の列
いよいよ夜の部、再入場。
だが、最初の一歩から事態は一変していた。
入り口付近のファーストショット・ポイントからして、もう**「全然進まねえ」**のだ。
全員がスマホを構え、ベストショットを狙っている。
やっとの思いで入り口をクリアしても、メイン会場へ続く道は、ディズニーランドのアトラクション待ちかと思うほどの長蛇の列。
昼間に5分で歩けた距離が、今は果てしなく遠い。
「焦るな、俺。こういう時こそ、一枚に魂を込めるんだ」
刻一刻と迫る帰りの電車の時間。
冷え込みは増し、足先の感覚は消えかかっている。
列はゆっくり進み、幻想世界が徐々に姿を現した。
とりあえず広角で全景を撮影し、そのあとは望遠を使って気が赴くままシャッターを切りまくった。
【本日の戦果】
入口での渋滞を引き起こした風景。これは期待感が増してしまう。
メイン会場の氷柱。高感度撮影のため画像は粗いが雰囲気が伝わってくる。
いろいろな光を反射しておもしろい。


望遠で覗く世界は、また別の光を与えられ、自らの影に姿を浮かび上がらせる。
撮影を終えて
ヘトヘトになりながら駅へ向かう。
10年ぶりに手にしたカメラ。
カビだらけのレンズ。
どやしてくる母親。
そして予想外の混雑。
スマートな撮影行ではなかったけれど、ファインダー越しに「最高の瞬間」を待つあの独特の緊張感は、10年前と少しも変わっていなかった。
次はどこの景色を撮りに行こうか。そんなことを考えながら、帰りの電車の温かい座席で、私は心地よい眠りに落ちた。
「あんた、漬物は!?」
そう聞こえた気がした。
・・・言い訳は起きてから考えよう。
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