2026/01/27 09:00

これまで2回にわたり、メディアの変容やコンプライアンスの影響から「若者のテレビ離れ」を考察してきました。最終回となる今回は、実際に今の若者たちに「ずばり、テレビを見るか?」という本音を聞いてみた結果を共有します。

そこから見えてきたのは、私たちが想像していた「テレビ離れ」とは少し違う、切実な「仕組みへの違和感」でした。


「見ない」のではない。「選ばない」理由がある

インタビューの結果、答えは概ね「NO」。

しかし、詳しく話を聞くと、彼らは決してテレビを嫌っているわけではありませんでした。彼らにとってテレビは、数あるエンタメの中の「選択肢の一つ」に過ぎないのです。

では、なぜその選択肢の優先順位が下がってしまうのか。

そこには大きく3つのストレスがありました。

 

  1. 時間的な拘束への抵抗 : 「その時間にテレビの前にいなければならない」という拘束を嫌います。自分のタイムラインで生きたい彼らにとって、放送スケジュールに自分を合わせることは、現代のライフスタイルにそぐわないのです。
  2. 没入感を削ぐ「ノイズ」 : 「集中したいのにワイプ(小窓)が邪魔」「再現VTR中にスタジオの笑い声やコメントが被るのが興ざめする」といった意見が目立ちました。純粋にコンテンツを楽しみたいのに、過剰な演出が「雑音」として捉えられています。
  3. 不適切なタイミングのCM 「物語のクライマックスでCMが入ると、一気にどうでもよくなる」。これは配信サイトの「スキップ」や「ノンストップ視聴」に慣れた世代ならではの、生理的な拒絶反応とも言えます。

 

若者が求める「本物」と「線引き」

意外だったのは、「内容がつまらない」という意見は少数派だったことです。

彼らは番組の内容そのものを否定しているわけではありません。

彼らが求めているのは、より「純度の高い視聴体験」です。

これはドキュメンタリーが好きという意味ではなく、「大人の打算や利権が見えないこと」を指しています。

透けて見える裏事情を、彼らは敏感に察知し、それを「不純なもの」として嫌います。

より表現の自由度が高く、クリエイターの意志がストレートに伝わるネット配信コンテンツへ流れるのは、自然な流れと言えるでしょう。

 

それでもテレビが「熱狂」を生む瞬間

しかし、そんな彼らが「絶対にリアルタイムでテレビを見る」という瞬間があります。

それは、「推し」(特定の人物・グループ・コンテンツ)がテレビに出演する時です。

ここではテレビの「拡散力」を利用すべく、SNSが大いに賑わいます。

  • 番組を視聴しながらSNS実況で盛り上がる二次的な楽しみ
  • ハッシュタグをトレンド入りさせ、推しをトップワードにするという共通目標

彼らにとってテレビは、もはや一方的に受け取るメディアではなく、SNSという戦場で共に戦うための「共通言語」なのです。

この時ばかりは、テレビは最強のエンタメ装置へと変貌します。


結論:進まなかった「仕組み」のアップデート

3回を通してこの問題と向き合って感じたこと。それは、起きている現象は「若者のテレビ離れ」ではなく、「テレビの時代離れ」だということです。

テレビ局は、時代の変化に合わせた「番組内容」を作る努力はしてきました。

しかし、「視聴する仕組みそのもの」を今の時代に最適化することは、既存のビジネスモデル(広告モデルや放送枠の概念)がある以上、非常に困難だったようです。

若者たちは、決してコンテンツを捨てたわけではありません。

ただ、自分たちの価値観やスピード感に、テレビというシステムが追いついていないだけなのです。

 

最後に:

若者たちがテレビ番組において「これはいらない」「邪魔だ」と感じている、あるいはその可能性がある要素を列挙していきましょう。

1. 構造・テンポに関するノイズ(タイパの阻害)

  • CMのあと、衝撃の展開が!」という煽り: 同じ映像をCM前後で二度見せられる。
  • 冗長なオープニングとエンディング: 本題に入るまでの「タメ」が長すぎる。
  • スローモーションの多用: 決定的な瞬間を何度も繰り返す演出。

2. 視覚・聴覚に関するノイズ(情報の過剰供給)

  • 過剰なテロップ(字幕): 喋っている内容をすべて文字におこす演出。リアクションを強調する派手な装飾文字。
  • 大きな笑い声の効果音: 「ここで笑ってください」という強制的な演出。
  • ワイプ(画面隅の顔出し): VTR中のタレントのリアクション。

3. 文脈・心理に関するノイズ(不自然さ)

  • 「ヤラセ」を感じさせる台本通り感: 予定調和なコメントや、オーバーリアクション。
  • アップデートされていない価値観: ジェンダー、ルッキズム、上下関係を笑いにするような古いノリは「不快な雑音」。
  • 「内輪ウケ」の空気: 視聴者を置いてけぼりにしたスタジオの盛り上がり。

4. 広告・プラットフォームに関するノイズ

  • 「続きはWebで」などの誘導: 一つの媒体で完結しない不親切さ。
  • 強制視聴広告: ネット配信での「スキップできない広告」。

 

結局のところ、面白いか面白くないかの選択でしかなく古い世代には情報量が多い現在の番組はいささか疲れてしまうし、無限に選択肢がある若者世代は可処分時間の不足によりストレスを抱えてしまう。

見ないという選択は意外にも重要なのかもしれません。