2025/07/22 09:00




30代半ば、僕は町の写真屋で毎日フィルムを現像していました。

ある日、雑誌で見た一枚の写真が僕の心を鷲掴みにた。

滝の写真。

水しぶきが弾ける躍動感、光に透ける水の輝き。

これを自分の手で表現したい――

その衝動が、僕を初めての一眼レフへと駆り立てたんです。

 

カメラを手に入れたボクは休みの日、まだ見ぬ滝を目指しました。

当時の僕はフィルム選びからシャッタースピード、絞りの設定まで店の先輩に教えを請う毎日。

今思えばその一つひとつの作業が、僕の情熱を燃やす薪のようでした。

 

家からバスと電車を乗り継ぐこと2時間。

目的の駅に降り立ち、そこからさらに山奥へ1時間。

新緑が目に眩しい。

涼しげな川のせせらぎが、まるで僕の到着を歓迎しているかのようでした。

一歩足を踏み入れるごとに、空気が変わっていくのが分かります。

ひんやりとした清々しい空気に包まれ、次第に大きくなる水の音。

そして、ついにその滝は姿を現しました。

決して大きくはないけれど、当時の僕には圧倒的な存在感でした。


「さあ、ここからが僕の舞台だ」


僕は興奮に震える手でカメラを構えました。

雑誌で見たような躍動感ある水しぶきを求めて、絞りやシャッタースピード、画角を様々に変えながら36枚撮りのフィルムをあっという間に2本使い切りました。

ファインダー越しに見たのは飛沫が跳ねる躍動感と、それとは対照的なふわりとした滝の本筋。

幾重にも細い糸を重ねたような水の束。

あたりを包み込む幻想的な霧のような水しぶき。

あの日の僕はどれだけその美しさを表現できただろうか?


「写真は技術じゃない、情熱なんだ!」かつて、そう僕に教えてくれた人がいました。


「良い写真を撮るコツはシャッターを押すことだよ」と茶化すように笑いかけてくる人だったが、

一緒にお酒を飲んでいると熱血な面も見せてきた。


「構図がどうとかレンズがどうとかは、夢中でシャッター切ってれば自然と身につくんだよ!」

「それよりも被写体の声に耳を傾けろ!」

「よく見ろ、よく聞け、被写体がどう撮られたいか…おねだりしてくっからさ」

いつもの茶化した笑顔に戻っていた。

 

あれから20年。

カメラを片手に出かける機会も、めっきり減ってしまいました。

けれど、もしまたシャッターを切る機会があれば、僕はあの日の自分を思い出すでしょう。


あの日の滝、そこに注いだ僕の熱い情熱を。



 

情熱をもって読んで欲しい、滝の撮影テクニック!

滝の撮影では、シャッタースピードをどうコントロールするかが最も重要なポイントです。


シャッタースピードの使い分け:

高速シャッター(例:1/250秒以上): 

水しぶきが飛び散る瞬間を捉え、水の躍動感や力強さを表現したい場合に有効です。

水量が豊富で勢いのある滝に適しています。


低速シャッター(長時間露光)(例:1/4秒~数秒、数十秒): 

水の流れを絹糸のように滑らかに、あるいは霞のように幻想的に表現したい場合に用います。

滝の本筋が白く「流れる」ように写り、周りの風景との対比が美しくなります。

光の量や滝の落差、水流の速さによって適切なシャッタースピードは変わります。

水の落差が少ない滝や水流がゆっくりな滝では、より長いシャッタースピードが必要になることがあります。

ミスト感を強調したい場合は、シャッタースピードを長すぎないように調整することがポイントです。


絞り(F値)の設定:

F8~F16程度: 被写界深度を深くし、滝全体だけでなく周りの岩や木々などもシャープに写し込むために少し絞り気味にするのが一般的です。


ISO感度:

最低感度(ISO 100や200): ノイズを抑え画質を最高にするために基本的に最低感度に設定します。

長時間露光を行う際も、ISO感度を上げる必要はほとんどありません。


構図:

縦構図 : 滝の高さや垂直方向の流れを強調したい場合に適しています。

横構図 : 滝の幅広さや周囲の景観を含めて表現したい場合に適しています。

周囲の要素を取り入れる : 苔むした岩、新緑の木々、紅葉など、滝周辺の自然を構図に取り入れることでより魅力的な写真になります。


光の選び方:

曇りの日や早朝・夕方 : 直射日光が当たると、滝の白飛びや影の黒つぶれが発生しやすくなります。

光が柔らかい曇りの日や、日差しが差し込む早朝・夕方は光が均一に回り撮影に適しています。

CPLフィルターの活用 : 水面や葉の表面の反射を取り除き、色を鮮やかにすることができます。


ピント合わせ:

マニュアルフォーカス(MF): 暗い場所や水しぶきでAFが迷う場合があるためライブビューで拡大してピントを合わせ、固定しておくと確実です。



滝の撮影に役立つ機材

滝の撮影には、シャッタースピードを自在に操り、安定した撮影を行うための機材が不可欠です。


カメラ:

一眼レフカメラまたはミラーレス一眼カメラ : 

マニュアル設定が可能で、交換レンズやフィルターを装着できるものが望ましいです。

バリアングル液晶モニターがあると、低いアングルからの撮影などで便利です。


レンズ:

標準ズームレンズ : 広角から中望遠までカバーできるため、汎用性が高いです。

広角レンズ : 滝の全景や周囲の雄大な景色を収めたい場合に有効です。

望遠レンズ : 遠くにある滝の一部を切り取ったり、水流のアップを狙ったりする場合に役立ちます。


三脚:

必須アイテム : 

長時間露光を行う際に手ブレを防ぐため、非常に重要です。

安定性があり、多少の風でも揺れない頑丈なものを選びましょう。


NDフィルター(減光フィルター):

必須アイテム : 

日中の明るい場所で長時間露光を行う際に、光の量を減らすことでシャッタースピードを遅くすることができます。

濃度 は ND8、ND16あたりが汎用性が高く、初めて使う方にもおすすめです。

濃度可変式のNDフィルターも便利です。


CPLフィルター(円偏光フィルター):

水面や岩、葉の表面の光の反射を抑え、透明感や色彩を向上させる効果があります。

青空をより鮮やかに写すこともできます。

滝の撮影では、水面のギラつきを抑え水底を見えやすくしたり、濡れた岩のしっとりとした質感を表現したりするのに役立ちます。


レリーズ(リモートシャッター):

シャッターボタンを押す際のブレを防ぎ、より安定した撮影が可能です。

ケーブルレリーズやワイヤレスレリーズ、スマートフォンのアプリ連携機能などがあります。

レリーズがない場合は、カメラの2秒タイマー機能でも代用できます。


その他あると便利なもの:

レンズ拭き・ブロアー : 水しぶきや湿気でレンズが濡れた際に拭き取るため。

予備バッテリー : 長時間撮影や寒冷地での撮影に備えて。

レインカバー・防水バッグ : カメラを水しぶきや雨から守るため。

滑りにくい靴(渓流シューズや長靴): 滝周辺は滑りやすい場所が多いため、安全確保のため。


これらのテクニックと機材を参考に、ぜひあなただけの素晴らしい滝の写真を撮影してください。