2025/02/04 09:00

 

 

はじめに

 

 

「写真を撮るのにカメラはいらない」

 

 

現代は写真屋にとって、なんとも皮肉な時代となりました。

 

私たち写真屋はお客様の写真をプリントすることで収入を得ていましたが、デジタル時代の到来によりプリントの需要は激減しました。

 

これは、データでの保存や閲覧が簡単になったためであり、その大きな要因はスマートフォンの普及です。

 

 

しかし、そんなデジタル時代においても、プリントを必要とする人々がいます。

 

それが「ドルオタ」、つまりアイドルオタクと呼ばれる人々です。

 

彼らは「推し活」の一環として、「ブロマイド」や「チェキ」を購入します。

 

これらはコンサートやイベントで販売され、基本的には再販されません。

 

「今」しか手に入らない推しの姿が収められた、非常に貴重なアイテムです。

 

 

ブロマイドとチェキには決定的な違いがあります。それは希少性です。

 

ブロマイドは量産が可能ですが、世界に1枚しか存在しないチェキは、ドルオタにとっての宝物となるのです。

 

 

今回は、そんな「チェキ」について、ドルオタ(=ファン)としての想いも交えながら語っていきます。

 

 

 

1.チェキの歴史

 

 

チェキは、富士フイルムが1998年に発売したインスタントカメラ「instax」の愛称です。

 

撮影後すぐに写真が現像される特性から、瞬時に思い出を形に残せるツールとして人気を博しました。

 

 

1999年には、大きめの写真が撮れる「instax WIDE」が発売され、同年末には2代目チェキ「instax mini 20」が登場。そのスリムで丸いデザインが人気となりました。

 

 

2014年にはスマートフォンの普及に合わせ、「instax SHARE SP1」が登場。

 

「スマホでチェキ」という愛称のとおり、スマホ画像をチェキプリントできるプリンターとして注目を集めました。

 

 

その後も、時代と共に機能が拡充されました。

 

自撮りミラー、背景きれいフラッシュ、バルブ撮影や二重露光機能などの本格的なカメラ機能が追加され、2017年にはデジタルセンサーを搭載したモデルが登場。

 

さらに、デジタル技術が活かされたチェキは、フィルター機能による多彩な表現や、QRコードを利用した音声データの記録、ARエフェクト機能など、さまざまな進化を遂げています。

 

現在では、Bluetoothでスマホと連携し、フィルムを装填せずに使用できる機種も登場しました。

 

 

「フィルムを装填せずに使用できる機種が登場」というと「あれ、結局プリントはいらないってこと?」となりそうですが、そうではありません。

 

ドルオタが求めるのは、加工ができるデータではなく、世界に1枚きりのチェキプリントなのです。

 

 

 

 

2.チェキフィルムの種類とアイドルの現場での使われ方

 

 

(1)instax mini フィルム

 

アイドルの現場で最も使われる

 

•サイズ:86×54mm(画面サイズ:62×46mm

 

•特徴:一般的なチェキ用フィルム。キャラクターデザインのバリエーションもあるが、アイドルの現場では無地のものが好まれ、サインや落書きが加えられることで希少性が高まる。

 

 

(2)instax square フィルム

 

アイドルの現場で稀に使用される

 

•サイズ:72×86mm(画面サイズ:62×62mm

 

•特徴:正方形フォーマットで背景までしっかり写り、11の画面サイズ独特の雰囲気が楽しめる。アイドルの現場では使用頻度は低いが、無地のものが好まれる。

 

 

(3)instax wide フィルム

 

小劇場での舞台やイベントで使用されることがある

 

•サイズ:108×86mm(画面サイズ:99×62mm

 

•特徴:横長フォーマットで大勢の撮影に適する。舞台キャストの集合写真販売時に用いられることが多い。ファンはポーズの指定をしたり、推しを間近で見たりしながら参加する。

 

大勢の撮影に適するが、一人のファンがアイドルグループに囲まれて撮影できる・・・などというシチュエーションは無く(少なくとも筆者は経験したことがない)、過剰な夢を見てはいけない。

 

 

 

3.アイドルチェキの入手方法

 

 

アイドルのチェキを手に入れるには相応の努力が必要となります。代表的な例を紹介していきます。

 

 

(1)「チェキ会」に参加する

 

ライブ後などに開催されることが多い。撮影チケットまたは撮影チケット付きグッズを購入することで、推しとツーショット撮影ができることが多い。

 

購入した数の分の撮影が終わるまで、推しとお喋りができたりもする。

 

 

(2)CDBlu-rayの予約特典

 

予約特典にチェキが付いてくる場合、サイン入りチェキが含まれていることがある。

 

チェキの場合、そのフィルムの特性から必ず直筆となるので期待値が高い。

 

ただし、キャッシュレス決済で購入しすぎると、翌月あたりに恐ろしい結果を招くことに。ご購入は計画的に。

 

 

(3)雑誌の懸賞

 

多くのアイドル雑誌で毎号チェキのプレゼント懸賞を行っている。

 

推しのインタビュー記事が掲載された際は懸賞に応募するチャンス。

 

確実に入手できるわけではないが、そのぶん希少価値は高くなる。

 

 

 

4.チェキに関する豆知識

 

 

「チェキを振るのはNG!」

 

アイドルの現場では、チェキを撮影後に振る人をよく見かけますが、これは間違いです。

 

昔のポラロイドカメラの習慣から来ているのですが、現代のチェキフィルムは振ると現像ムラが生じる可能性があります。

 

諸説ありますが、昔のフィルムは現像液が均一に広がるように振る必要があると考えられていたようです。

 

 

5.アイドル文化におけるチェキの役割と意義

 

 

チェキは、アイドルとファンが直接交流する手段として広く活用されています。

 

特に、一部のアイドルはライブ後の物販で「チェキ会」を開催し、ファンと共に写真を撮ることが定番となっています。

 

チェキ会では、ファンはアイドルと短い時間ながらも直接会話し、写真を撮ることで特別な思い出を残すことができます。

 

ファンにとってチェキは、推しとの絆を象徴する欠かせないツールであり、共に歩んできた喜びを形にしたものなのです。

 

 

◆チェキは「絆」

 

チェキは、アイドルとファンの絆を強くする掛け替えのない宝物です。

 

チェキを購入することでファンはアイドルとの幸せな体験を形に残し、次の機会に向け応援に熱を込めていきます。

 

 

◆チェキは「タイムマシーン」

 

チェキは、ファンにとって大切な思い出を物理的に残す方法です。

 

それと同時に推しとの特別な時間に戻れるタイムマシーンでもあります。

 

チェキを見て推しがどんな格好をしていたか、どんな会話をしたか、笑顔はどうだったか・・・いつでもあの時に戻ることができます。

 

 

◆チェキは「名刺」

 

チェキを通じて得られるものは推しとの思い出だけではありません。ファン同士の交流のきっかけにもなります。

 

チェキを見せ合ったり、交換したりすることで、ファン同士の絆も深まります。

 

 

 

まとめ

 

 

チェキは、アイドル文化において単なる写真撮影ツール以上の存在です。

 

ファンとアイドルの絆を深め、思い出という時間旅行を可能にし、ファン同士のコミュニティ形成にも寄与する重要な存在と言えます。

 

これからもチェキはアイドル文化の中で、その意義を持ち続けることでしょう。