2024/06/01 09:00
6月1日は「写真の日」であることはご存知でしょうか。
公益社団法人日本写真協会が1951年(昭和26年)に制定しました。
1 写真の日とは
1841年(天保12年)6月1日に長崎奉行の御用時計師である上野俊之丞が島津斉彬を撮影した、という明治時代の新聞の連載記事に基づいて、日本で初めて写真が撮影された日である、とされていたことにより制定されました。
しかしその後、この記事の内容が誤りであることが確認されましたが、日本写真協会では引き続き6月1日を写真の日として、表彰事業や各種の写真行事を行っているそうです。
2 日本で撮影された最古の写真
現在残っている、日本で最も古く撮影に成功した写真は、1857年(安政4年)9月17日に、薩摩藩士の市来四郎、宇宿彦右衛門らが藩主島津斉彬の肖像を撮影したものです。
この時の写真は銀板写真というもので、1839年にフランス人のルイ・ジャック・マンデ・ダゲールが発明したことからダゲレオタイプとも言われます。銀板を磨き、ヨウ素の蒸気をあてて感光性を与えたものをカメラに入れて撮影し、水銀の蒸気をあてて現像すると、銀板の表面に画像が形成されます。これを飽和食塩溶液で定着させるというもので、1枚の銀の板に画像を出すものであるため、当然焼き増しなどは出来ません。
島津家の博物館である鹿児島の尚古集成館にはこの写真が保存されており、1999年(平成11年)4月に写真初の重要文化財として文化庁より指定を受けています。
写真の日の根拠となる日付は間違っていましたが、日本で初めての写真に島津斉彬という人物が関わっていたことは正しかったということですね。
3 島津斉彬
この薩摩藩主島津斉彬は、教科書にも「四賢侯」の1人として出てくる、江戸時代末期の名君とされる人です。藩主として集成館事業という殖産興業を進めました。
集成館事業は、斉彬によって作られたアジア初の近代的西洋式工場群で、砲術や製鉄・造船・紡績に力を注ぎ、大砲製造から洋式帆船の建造、武器弾薬から食品製造、ガス灯の実験など幅広い事業を展開していました。これらの事業は、のちの明治時代の日本における産業革命に繋がります。
また、斉彬は西郷隆盛や大久保利通を起用するなど、人材登用においても、のちの明治維新に繋がる流れを作りました。
名君とされましたが、明治維新の約10年前、1858年(安政5年)に死去しています。
4 市来四郎と宇宿彦右衛門
斉彬の撮影をした市来四郎という人は、当時の先端技術である西洋式の砲術を学び、斉彬の側近となり、集成館事業に携わっています。
維新後には、主に島津久光(斉彬の異母弟)の元で島津家に関わる史料の収集を行い、長命して明治36年(1903年)まで生きています。
宇宿彦右衛門という人も当時の技術者で、市来四郎と同じく集成館事業に携わっていました。
後には長崎海軍伝習所に参加し蒸気機関の伝習を受け、薩摩藩の海事を担っていましたが、幕末の争いのなか1863年(文久3年)に乗船していた船が長州藩に砲撃され、没しています。
5 斉彬と写真~変わらないもの~
島津斉彬は、当時の最先端の技術を研究させるなかで、写真撮影の実験をさせていました。
そして、斉彬は自分でも写真を撮ったという話もあります。前述の市来四郎が後年の1884年(明治17年)にまとめた『斉彬公御言行録』には、先述の肖像を撮らせる数日前の9月13日に側近の山田為正を写し、16日にも琉球に渡る予定だった市来四郎を写して、それを留守中の家族に預けるよう渡したそうです。ただ、これらの写真は現存していません。
写真について斉彬は「父母の姿をも百年の後に残す貴重の術」と評していたそうです。
簡単に撮影できるようになった現代では、写真は貴重の術では無くなりました。しかし約160年以上前の人が、父や母の姿を後世に残してあげたい、残すことに価値がある、と考えていたことは、現代と変わらないですね。
想いや思い出をかたちにしておきたい、長く残したい、その考えはこれからも変わらないでしょう。
6 おもいを残す
斉彬の時代からさらに下って、写真は紙にすることができるようになりました。紙にすることによって、保存したり後世に残すことが簡単になりました。
~1931年(昭和6年)頃の写真~
ただし、紙の写真もいつかは劣化したり、紛失したりしてしまいます。
私たちのおもいで写真デジタイズ(オモデジ)は、さすがに銀板写真のデータ化は出来ませんが、紙の写真であればどの時代のものもデジタル化することができます。
そしてデジタルデータは、紙の写真ではできなかった多くのことができるようになります。
遠くに住む人とSNSやメールで共有したり、まとめてフォトブックに編集したり、大きく引き伸ばしたりできます。
コピーも簡単なのでバックアッブして保存することで、紛失のリスクも減らすことができます。
おもいで写真デジタイズは、いつの時代も変わらない、思い出を残したいという考えに応えたいと思っています。
ぜひ今のうちに、データ化しておきましょう。